"ワイルドカード"をご存知だろうか。

ポーカーや7並べでいうジョーカーのことで、
自分の欲しいカードに代替できる役割を持つカードのことだ。


私の仕事場に、同業者の方が仕事を依頼したことがあった。
その業種では、同業のよしみなのか、値引きは当たり前という空気がある中で、
その人は厚意を頑なに断って、一般客と同じ額を払ってくれた。
その姿には何か心動かされるものがあった。 
"親しき仲に対する礼儀"ではないと感じた。
仕事に対する敬意、そういうものを感じさせてくれたのだ。
その人の思想やルールは何だったのだろう。考えさせられた。


生活における金銭がこのワイルドカードの役割を持つ。
〜がない、〜があれば便利になる、という個人的な生活上の不足を、
私達は金銭を使って補っていく。
いわば、生活を豊かにするためのワイルドカードなのだ。


〜がない、〜があれば便利になるという生活の不足を埋めるのが商品などを含むサービス。
一つの商品を作るために設計、生産、梱包、配送…たくさんの人たちが
仕事をしている。医療などのサービス業は少し形が変わっているけど、
その仕事もまた、求める人の不足を補い、生活を豊かにするという役割を持っている。

だからこそ金銭との取引が成立しているのだと思う。
仕事をしてもらった御礼に、
仕事した人の生活が豊かになるためのワイルドカードを渡すのだ。
同業者の方は、そう考えていたからお金を支払ってくれたではないか、と
私なりに結論付けてみた。



金銭は仕事に対して支払われるもの。
仕事は生活を豊かにするもの。
生活の豊かさは金銭によって補われるもの。


会社の中で一日パソコンと向き合って働く人たちは、自分たちのした仕事
で生活が豊かになった人を見れる機会は少ないのだろう。
周りに合わせてわざと残業する文化があるし、人間関係はちょっと複雑だったりするし、
格差社会だし、社会はもっと利己的な世界だ。
様々な力の歪みで見えにくくなっているけれど、金銭で結ばれる仕事と生活の
対等な関係は、理想論だけで言えば、こういうところにあるんだと思う。